たびびとが行く

自宅の近所から日本国内、世界まで、あらゆるところをうろついて、そこで見聞きしたものごとを、ただ延々と書き連ねるブログです。時々、より楽しく快適な旅への豆知識もご紹介。

1年に2日しか営業しない駅: JR四国・津島ノ宮駅

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地元では「津嶋さん」と呼ばれ、子どもの守り神として親しまれる「津島神社」は、香川県三豊市、瀬戸内海に浮かぶ小さな島にある。この津島神社では、毎年8月4日から5日にかけて、例大祭が催され、この両日には、地元のお父さん・お母さんが我が子を連れて、この島にお参りにやってくる。この例大祭が開かれる両日以外は、この津島神社がある島に渡るための橋は閉ざされ、一般の人は通ることができない。したがって、この津島神社の本殿を訪れる機会は、毎年例大祭の催される、この8月4日と5日の、2日間しかないのだ。

この津島神社例大祭に合わせて、その当日にのみ営業が行われる駅が、この津島神社の最寄り駅である、JR四国の「津島ノ宮」駅である。周辺に住宅があまり多くないこともあって、普段はこの駅は営業が行われず、ここを通る全ての列車が通過する。例大祭の日以外に、この駅の存在を地元の人以外が知るには、この駅のある予讃線を走る列車の車窓から、瀬戸内海側を注意深く見守りながら、自らの目でこの駅を通過するのを確かめるしかない。

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普段は、そもそも営業してさえいない、この津島ノ宮駅も、津島神社例大祭の当日だけは、多くの人々で賑わい、そこを訪れる乗客の世話をするために、多くの職員が送り込まれてくる。昔ながらの、かさ上げもされないままのプラットフォームは、列車のドアとの間に大きな段差ができるため、小さな子どもが転ぶのを防いだり、ベビーカーの乗降を手助けするために、職員が真夏の猛暑の中で懸命のサービスに努める。

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普段は全く無人のこの駅にも、毎年この2日間だけのための、小さな駅舎がある。「津島の宮駅」という駅名標と、その上の軒下に描かれた可愛らしい顔の看板が特徴的だ。

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年に2日しか営業しない駅という物珍しさもあって、津島神社への参詣客だけでなく、一般の観光客、とりわけ鉄道ファンの間でも人気のある駅の一つだ。筆者も、この駅を訪れた日に担当していた職員に、1枚、入場券を発行してもらった。こうした一般の入場券だけでなく、土産物としての記念入場券セットや、その他グッズも、飛ぶように売れて行く。

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さて、お目当ての津島神社への参詣道に当たる、神社がある島へ渡るための橋は、駅から歩いて数分のところにある、大鳥居の下から始まる。

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橋の長さは、およそ250m。真夏の暑い中とはいえ、雨さえ降っていなければ、潮風がすがすがしく感じられるほど気分がよく、渡るのにもあまり苦にならない。橋の先にぽつんと浮かぶ島の雰囲気は、いかにも「パワースポット」という風で、何か特別なものを、訪れる者に感じさせる。

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津島神社の本殿は、島の中の高いところにあり、そこから急峻な階段を上って行く必要がある。子どもを背負ったままで登って行くには、少し大変かもしれない。

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営業日当日の津島ノ宮駅には、日よけのテントで覆われた簡易休憩所が用意される。大型の扇風機も用意され、「冷房完備」だ。

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子どもの神様である津島神社の参詣客のための駅にしては、「意外にも」喫煙コーナーも設置されていた。愛煙家のお父さん・お母さんには、一息就ける場としてありがたい存在にもなりそうだが、ひょっとしたら、世界的な禁煙化の動きを受けて、この喫煙コーナーも、今後消滅するかもしれない。少なくとも、筆者が訪れた時には、見ていた限りでは、このコーナーを利用する乗客はいなかった。

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この駅を運営するJR四国にとっても、津島神社例大祭は、ちょっとした特別な日のようで、この日に合わせて、限定の特別列車も走らせる。地元にとって は、津島神社と並んで、この津島ノ宮駅自体も、一つの観光資源としても定着しているように思えた。

ネットを通じて知り合った、地元に住むという方に伺ってみると、津島神社では、この夏の例大祭の他にも、毎年秋に七五三祭りが催されるという。津島ノ宮駅の営業こそないが、そこはさすがに「子どもの神様」というだけのこともあろうから、さぞかし賑やかになるのだろう。そんな時期にも、子どもたちの歓声と、その幸せな成長を願うお父さん・お母さんたちの笑顔を楽しみに、改めて訪れてみるのも良さそうだ。

瀬戸内海の穏やかな雰囲気とも相まって、何度でも訪れたい と思わせてくれる神社と駅であった。